12月25日、静岡市清水区にある船越生涯学習交流館様から、「やさしい日本語」の講師依頼を受けて行って参りました。
こちらの施設、建物自体は築48年。以前は旅館だったそうですが、平成2年に地域の拠点として同センターとして区民の皆様に親しまれてきたそうです。
令和4年3月には改修工事のため閉鎖し、2年後にリニューアルするということですが、工事中は場所を移して施設を継続するとお聞きし、安心いたしました。
そんな施設の転機という大事な時期にお招きいただき、また区民の皆様の学びに「やさしい日本語」というテーマをお選びいただき、光栄です。
講座室に到着してすぐ、大きな窓から富士山が見え、出迎えてくれました。
反対側の眼下には、船越堤公園が広がっています。キンクロハジロという渡り鳥が悠々と泳いでいます。
なぜ、こんなにも施設周辺のご紹介をしっかりしているかと言いますと…
その答えは、本記事の後半へ続きます。さっそくですが、
①いつものように団体紹介をしました。自助努力団体としてスタートしたフィリピノナガイサですが年月を経て、今では日本人の会員も参加しています。グループメンバー間の交流はフィリピノ語はもとより、日本語も使われています。
②次に「やさしい日本語ならわかる」という人がいることを数字でご覧いただきました。ここまで、プロローグです。
③静岡県「話そう、やさしい日本語。」の動画視聴をしました。こちらの動画は、「やさしい日本語」の概要がわかります。
④その後、「はさみの法則」の補足をしまして、
⑤段階を追って、難しいと感じる→やさしく感じるを体感を。
・聞くだけはどうか
・ふりがな・スペースなしのレイアウトはどうか
・ふりがな・スペースありだとどうか
・写真が入るとどうか…
まずはUD的な視点で「見た目」の段階を体感していただきました。
その後、皆で「はさみの法則」を使ったワーク活動へ。
今回使用した題材はこちら。船越生涯学習交流館のHPから、施設紹介の箇所です。
ワーク活動中は、こんなお声が聞こえてきました。
・「隣接」が難しいじゃん~
・周辺の自然について、あれもこれもいらん。ここは桜が有名だから、桜のことだけ言えばいいわよね?
・文化の香り高いって、何?!
・「船越生涯学習交流館」って名称は長いから、私たちも普段、使わないじゃんね。「船越交流館」はどう?
・「地域と行政とつなぐ情報センター」はキーだから、絶対入れないとダメだよね
・「各種講座を開催する」は、「色々な講座」に置き換えましょうか。でも、「開催」も難しい ですよね…
・後半は、「大人も子供も利用しやすいセンターを目指しています」でまとめちゃいましょう
・これ、元の文章がおかしいんじゃない!?
など。
ちなみに元の文章は「おかしい」とダメ出しされるものではなくて、それだけ「思いの詰まった施設」というところがとても大事だと思います♡
あれもこれも伝えたいこと、知ってほしいことがあって魅力ある施設だからこそ、ちょっとした工夫で、その思いをわかりやすく伝え、「誰でも」気軽に集まることを呼び掛けるものになりますね。
⑥「ワークをやってみて、いかがでしたか」
・言葉を短く切ったり、簡単な言葉に置き換えることが難しかった。日本語のバリエーションがすぐに浮かばなかった。
・外国人が思ったよりも多く、でも日本語でもわかるというデータがあるなら、「やさしい日本語」を勉強して伝えなければと思った。
・元の文章を作った方の思いを汲み取りながら、どこまで変換していいのかと言うことについても悩んだ。(「そうなんですよ、通訳者はこれと同じことをいつも感じて仕事をしていると思われます…」なんて共有も。また、「最近では『やさしい日本語』は多言語対応の一つになっているんですよ」というお話をさせていただきましたが、皆様、驚いていらっしゃいました)
・やさしい日本語は難しいんですね。
…そうなんです。毎度、同じ締めくくりで恐縮ですが、「はい、難しいと思います」。
⑦今日、取り組んでいただいた「やさしい日本語」は書き言葉でしたが、皆さんが相手を想像しながら言葉を選んだということ自体が、「やさしい」ということなのだと思います。
⑧そして、話すときは、ぜひ目の前にいる人と「どうすればもっと話すことができるか」を大切に、伝え方のバリエーションを増やしていただければ幸いです。
⑨最後には、
・文化庁日本語学習動画サイト「つながるひろがるにほんごでのくらし」からパンフレットをお渡しし、教室活動での動画活用事例をお伝えしました。こちら、ご興味をお持ちいただき、「使ってみたい」というお声を頂戴しました!
・静岡県やさしい日本語バッジプレゼント(普及のご協力、よろしくお願いします)
⑩(コロナ以前の)この写真でフィニッシュ
こちらの写真をお見せしたところ、ご参加者の方々から具体的なご質問が出てまいりました。「実は、こういう活動をしたいと思っていた」という方が複数いらっしゃったのです!
・これは、大人の教室ですか。教えているのは日本語だけですか。子どもの勉強は誰が見ていますか
・全員フィリピン人ですか?
・この中に、日本人はいますか?
・これは、場所はどこですか?
など。
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今回のご参加者は普段からこちらの施設を利用されている方々、自治会関係者、施設職員の方々でした。この施設に「やさしい日本語」を取り入れたいという熱意をお持ちの職員さんがいらっしゃって、お招きいただきました。
職員の方があとで、こんなご感想を寄せてくださいました。「私どもの施設利用者は高齢化していて、ワーク活動はあまり興味が持てなかったり億劫だという人が多いんだけど、今日は全員がワークに集中していたので驚きました。やさしい日本語は大事だけど普及しないことが悩みだったので良かったです」とのこと。
うれしいお言葉でした。
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下記、今回お伺いした事務局としての「学び」を書き留め、結びます。
「やさしい日本語」のワーク活動に、「その現場にとってのリアルな素材」を扱い、「言語化する」「反芻する」ということで2つの気づきを得ました。
ひとつは「自分ごとになる」ということです。当事者になることで初めて、「やさしい日本語」に関心が向くということはあると思います。
もうひとつは、「これまでも目の前にあったんだけど、当たり前すぎて見過ごしがちだったもの」が息を吹き返したり、よみがえったりすることです。こうした機会が原点回帰となり、その現場のもつ本来の機能を再考するきっかけになったということでした。
今回のケースですと、現場の皆様で「船越生涯学習交流館とは、どんな施設?」ということを「やさしい日本語」を媒介にして向き合って、言語化していく…
この作業自体が学びであり、自分たちが共有して使う「モノ」「コト」の価値をグッと高めていらっしゃるようでした。(今年は、積志中学校でも似たワークを実施し、校章についての説明文の言いかえに取り組みました「こちら」)
こうした取組が、「誰もが」参加しやすい土壌づくりにつながっていくと嬉しいです。お声がけいただいた船越生涯学習交流館様、この度は貴重な機会をいただき誠にありがとうございました。
Maraming salamat po.
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