10月31日、文化庁委託「生活者としての外国人」のための日本語教育事業のうち、日本語教育を行う人材の養成・研修を実施致しました。

今回は元日系人会会長の足立ネルマ先生をお招きし、フィリピンの教育事情について伺いました。ちなみに、当法人の本講座にネルマ先生を招聘したのは、これで3年連続になります。

 

事務局から先生にお願いしていることの一つに、日系人の歴史についてを先生からお聞きしたいということがあります。毎年、必ずこのことをお願いしています。

ご参加者からもチャットを通じていくつがご質問があり、お時間の許す限り、先生と対話する機会を作りました。

・フィリピン日系人会について、フィリピン国内にはダバオ以外にもあるんですか?(あります。でもダバオはかなり大きいです)

・まだ、日系人と認定されていない人は、ダバオにどのくらいいますか?(はっきり分かっていないものの、カテゴリーCの日系人はまだいます。ただ「親の写真だけ持っている」「親から名前を聞いたことがあるけど、スペルがわからない(母語干渉)」というケースもあり、就籍活動に苦労されているケースも少なくないのが現状です)

・戦前のダバオ日系人社会の新・三種の神器って何ですか?(シンガーミシン、カメラ、ビデオ、冷蔵庫、アメリカ製の自家用車などです)

 

このあと、「フィリピンの教育事情」についても教えていただきました。

・義務教育(K12)について

・私立と公立の学校の違い

・フィリピン人にとっての英語教育の存在意義

・オンラインゲームが子どもに与える影響

・幼少時期の過ごし方が親子関係に与える影響

・フィリピンの成績表について

・TESDAについて

 

ご参加いただいた方々からは普段の支援現場での思い、本講座のご感想などがたくさん寄せられました。こうしたお声から、支援者の皆様が子どもたちの来日前後を関連付けて、ネルマ先生のお話を伺っていらしたことがよく伝わってまいりました。

なお、何かしらのご縁でフィリピンに滞在して、現地の教育に触れたことがあるという方も幾人かお見えでした。また、多くの方が「日系フィリピン人の歴史、現地の教育について詳細を聞くのは初めてだった」とおっしゃっていました。一部、ご感想を紹介します。

・日系人フィリピン人の歴史的背景が良く分かった。

・新しいフィリピンの教育制度と日本の教育制度の差異も理解できた。

・日本とフィリピンの関係を再確認する機会となった。

・ 戦争について他国に及ぼした影響など日本人はもっと多くを知らなければいけない。

・教育については、日本でも同様の問題を感じることもある。

・幅広く現地の教育に精通しているネルマ先生の話を聞けてよかった。支援現場で感じていたことが、今日の話ですべて納得した。これからは、より一層、彼らの背景に寄り添って一緒に目標を考えていこう、と思えた。

・支援現場で「子どもを祖国に置いてきました」という話を耳にした時は驚いたことがあったが、今日の話でOFWがGDPの10%とということからも、海外に出稼ぎに出るということが働き方の中の1つの大きな選択肢になっていることがわかった。

・政治情勢に大きな影響を受けられた人々の様子を学ぶいい機会になった。

・足立ネルマさんの説明がわかりやすかった。

・ 浜松では、日系ブラジルの方々の話しを聞く機会は多いものの、日系フィリピンの方々の歴史やフィリピンの教育事情について知る機会が少ない。今日の講座をきっかけに、もっとフィリピンのことについて勉強していきたい。

・東南アジアから来日した学習者を、なんとなくひとくくりにしてしまうような雰囲気を日本社会で感じていた。今日の話を聞いて、国それぞれに歴史、文化、言語があるということを日本社会で共有していくことがこれからの多文化共生には必要な視点だと感じた。

・フィリピンの多言語状況、多言語教育について聞けて、とても興味深かった。

・フィリピンは人的資源、鉱物資源と豊かな国だと感じている。

・当事者から伺う話は重みがあり、深い学びとなった。

・国自体が海外出稼ぎを推奨していて、ここから脱却できないと変わらないところもあると思う。でも、それを言っても仕方ないので、何か強みを見つけるしかない。

・将来が見えない、打ち込めるものが見つからないといった話は、日本の若者が抱えているジレンマや悩みとそう変わらない気もする。ただ学齢期を過ぎて日本へくる青年はそのようなジレンマに加えて言葉ができないので、そういった気持ちに寄り添える支援であってほしいと思う。

・自分の接するベトナム人たちの背景に似ていると思った。

・具体性があってとてもわかりやすかった。

 

ご参加いただいた皆様、そして何よりも気持ちを込めてお話をしてくださった足立ネルマ先生に改めてお礼申し上げます。Maraming salamat po.