【公開講座】日本語教育参照枠が目指す多様な評価と、シビックプライド

11月5日(土)公開講座、前半の「『地域』日本語教育が目指す人物像とは」に続き、後半は「日本語教育参照枠が目指す多様な評価と、シビックプライド」を実施しました。

講師は常葉大学造形学部造形学科教授・安武伸朗様、文化庁国語課日本語教育調査官・松井孝浩様にお願いし、実施致しましたのでご報告いたします。

 

①文化庁国語課日本語教育調査官・松井孝浩様「日本語教育に関する法律・方針・施策と『日本語教育の参照枠』」

日本語教育の推進に関する法律(令和元年法律第48号)

日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針

外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(令和4年度改訂)の概要

外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ

日本語教育の参照枠

国が出しているいくつかの報告書等をお示しいただき、来日し、滞在している方々の社会的文脈をよく考えた日本語教育の意義についてお話がありました。

 

ところで、皆さんは「シビックプライド」という言葉を聞いたことがありますか。シビックプライドとは「市民が、自分が暮らす都市に対して感じる誇りや愛着で、市民ひとりひとりが暮らしに感じる喜びから生まれたり、行政による戦略的なコミュニケーション計画から生まれたりするもの」と言われています。

このことは当法人はじめ、市民活動としての地域日本語教育団体さんは、腑に落ちるところではないかと考え、「シビックプライド」から活動のヒントが得られればと考えました。

そこで、続いては安武先生にご講義をお願い致しました。

 

②常葉大学造形学部造形学科教授・安武伸朗様「『静岡市民のシビックプライドの種を探す』課題解決学習(PBL)の実践報告」

冒頭、先生から「シビックプライド」の概要を簡単に伺ったあと、常葉大学の学生たちが2011年~2018年にかけて実施した取組についてお聞きしました。(常葉大学造形学部「シビックプライド研究会(未来デザイン研究会)」学生が参加する正課外PBLとして運営。大学の地域貢献活動支援、静岡県の大学コンソーシアムによる行政の課題解決事業支援など、学内外の活動資金を活用した事例)

★2011年 街を知る地図を作る

★2012年 愛着を語るワークショップ

★2013年 愛着を投稿してもらうWeb

★2014年 愛着の展示会をひらく

★2015年 人に注目する

★2016年 移住したい人にむけた魅力をまとめる

★2017年 静岡の嬉しい暮らし方を伝える

★2018年 嬉しい暮らし方から知る

上記の取組において、デザイン系の学部の強みとして、誇りや愛着が感じられる過程を「見える化」できたことは、シビックプライドに関する調査への理解に大きく寄与したのではないかというお話がありました。プロジェクトをチームで前に進めるのに、「見える化」することは、とても大切なのですね。

こうして、学生たちが「課題解決型学習」形式の調査で得られた結果や気づきを見える化し、ディスカッションを通して、シビックプライドの種のようなものを見つけていこうとした試みた一連の取組は、とても面白いと思いました。また、研究を進めていくうちに学生たちは「シビックプライドの確認には、自分の愛着を語り合う。だけど象徴的なデータはあまりない。シビックプライドの種は絞り込みが難しく、優先順位も混とんとしている」ということに気づいたそうです。

そしてもっと面白いことに、本講座はもともと「シビックプライドについて知りたい」ということから、安武先生にお願いしたのですが、実際はこうした「シビックプライド」の奥深さのみならず、学生たちの「課題解決型学習の過程やその効果」からも、私たち受講者に示唆を与えてくれたことでした。

学生たちによるアクティブラーニングによって、教員にも気づきが生まれたというお話が先生からありましたが、学生たちは現実社会に自身で見つけた課題に取り組む中で自己評価し、自身のキャリア形成についても考えるよう変化し、社会へ巣立って行ったそうです。シビックプライドの研究によって、地域の大人たちからお話を聞く機会を得て、就職活動への考え方にも影響を与えたというのです。

自分の暮らす都市への愛着、シビックプライドの醸成によって自己実現を考えるに至ったという大学生がたどった道筋の事例は、地域の日本語教育にとっても参考になるお話がたくさん含まれていたと思います。

安武先生、大変興味深いお話を聞かせていただきありがとうございました。

なお、安武先生の教え子たちが研究した成果の一部を、ウェブサイトで見つけました(シビックプライドの種発見ワークショップ

 

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ご参加者からは「シビックプライド」について多くの感想が寄せられました。

・日本語教育とは違う分野から地域を見つめるような事例を聞けて、新鮮だった。

・自分の住んでいる地域で共に暮らす外国人も巻き込んで、その都市にプライドを持つということがよかった。なにか一緒に作り上げていきたいと思った。

・とても良い内容だったので、日本語教育とのつながりが考えられるように発展して捉えなおしたい。

・日本語学習者をお客さんにしないというような発想が大事だと思うが、シビックプライドのワークショップにその可能性を感じた。

・街づくりは人づくりだということを改めて感じました。

 

次回は11月19日です。ご参加いただいた皆様、長いお時間おつかれさまでした。