9月20日、いよいよスタート!日本語教育を行う人材の養成・研修(文化庁委託)

9月20日、いよいよ今年度の「日本語教育を行う人材の養成・研修(文化庁委託)」が始まりました。シリーズ講座として12月まで続きます。その初回となるこの日は、2つのテーマをもとにお話をしましたので、ご報告します。

①「地域」日本語教育にまつわる施策から、求められる人材の今とこれからを知っておこう

 

プロローグとして、事務局半場から、

・ボランティアであり、教師であり、コーディネーターでもある日本語支援者としての私(自己理解)

・フィリピンコミュニティに関わりながら、しかし自身も「生活者」としては「当事者」であるという気づき

・関わりに年数が経ち、社会から専門性が求められるようになると同時に、自身もそう望んでいくという気持ちの変化について

ということで、日本語教師自身のキャリアについてお話申し上げました。そして、日本語教育は、いつも「社会情勢」が密接にかかわっているということも添えました。

 

 

次に浜松市国際課、古橋広樹さんから「浜松市の日本語教育施策」について、お話いだきました。

浜松市の人口動態から分析できることとして、

・リーマンショック後、帰国した人もいて人口全体はしばらく減少傾向になった

・しかし、公立小中学校に在籍する児童生徒数は減っていない

このことから、子どもを抱えている世帯は生活基盤を浜松において定住する傾向にあるのではないかということが読み取れるということでした。

これまで浜松市は外国人市民を地域の一員として受け入れるため、様々な施策を展開してきました。また今後、私たちのようなNPO等支援団体の経験やノウハウと連携して、一層の日本語学習機会の拡充を図っていくことを伺いました。

 

続いて、文化庁国語課・日本語教育専門職の松井孝浩さんにもお話を伺いました。松井さんの冒頭あいさつはなんと日本語、英語、ビサヤ語!でした。

松井さんからは深刻な日本の人口減少により、「地域活力の向上に寄与する日本語教育」は喫緊の課題であり、それに携わる日本語教育人材の確保、養成も大変重要になっているというお話がありました。

「地域活力の向上に寄与する日本語教育」に大事なことは、学習者は単に言語を学ぶ者ではなく「新たに学んだ言語を用いて社会に参加し、よりよい人生を歩もうとする社会的存在である」という視点を持つこと。

このことから日本社会は外国人の「言語を使ってできること」に注目し、「多様な日本語使用を尊重する」姿勢が大切であるという、日本語教育参照枠の言語教育観の柱についてもお聞かせいただきました。

日本語教育の参照枠(9月14日現在の情報はこちら

 

さて、ここからパネルディスカッションに移りまして当法人の代表理事、松本も加わりました。松本からは、地域日本語教育現場で痛感している「日本語教師のマインドセットの必要性」についてお話申し上げました。

現行の日本語教員養成プログラムが留学生指導向けに偏りすぎているのではないかという提言とその理由を述べました。

また、地域日本語教室という場はどうも学習者だけのニーズが集まるところでなく、日本社会側のニーズも集まってくる場であること。こうした多岐にわたる相談や要望をいかにしてさばくのか、その能力資質がなければ務まらないが、それは言語を教えることに長けているだけではどうにもならないということも併せて問題提起いたしました。

それから私たちの教室は比較的、出席率が良いほうだと思いますが、いっぽうであまり教室へ来られない人を「日本語学習の意欲が低い」という評価で見ていないということも、大切なメッセージとしてご報告申し上げました。

予定にはなかったことですが、ふだんスタッフはバヤニハン教室やハロハロ教室へどのように生徒の参加を呼び掛けているのか、お話いたしました。日ごろ活動を共にしているスタッフ同士ですが、しかし改めてそれぞれのスタッフによる「場づくり」の工夫を聞き、その努力がコミュニティの維持につながっているのだと気づきました。

スタッフにも話をする機会をいただきまして、ありがとうございました。(活動で身に着いている現場対応力が、このような突然のご指名にも役立ちましたね^^;)

 

―教室の前日に生徒全員に電話をかけて、「待ってるよ」って言います。そうやってたくさんの人が集まるセッティングをすると、仲間同士で情報交換する場になって、相談や悩みを互いに解決しあっていることもあります。

 

―フィリピノナガイサは勉強ばかりではなく、来日して不安なことを相談できるところでもあります。相談を通じて「日本語の勉強が必要かも?!」と思える声かけが大事だと思います。

 

―相談する場所というのは、「希望を与える場所」でもあると思います。私はフィリピノナガイサに行って、「日本語や学校の勉強をすれば大学に行けるんだ」と知って、がんばりました。

 

フィリピノナガイサは活動年数が長くなり、関わる年齢層にも幅が出てきました。コミュニティの機能を親世代は「相談場所」と認識しており、子ども世代は「希望を与える場所」と認識しているのが、とても面白いですね。

そこに日本語教師が関わると「日本語を勉強する場所」ということで、色々な視点を持つキーパーソンの集まりによって、たくさんのニーズに対応してきたことを改めて振り返るひとときになりました。

 

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②後半はタイトル変わりまして「海外の移民教育、複言語・複文化主義についても知っておこう」を、岩手大学国際交流教育センター松岡洋子教授から伺いました。

複言語・複文化主義という耳慣れない捉え方について、先生オリジナルの教材とご説明から大変わかりやすく伺うことができました。登場人物はカエルくん、ウサギくん、イルカくん、ネズミくん♪

それぞれのコミュニティでは通じる言語があるけれど、他のコミュニティに接したときでも「自分にとって必要な言葉」や「よく使う言葉」なら、コミュニティを超えてでも意味は理解できるようになるというのがキーワードでした。

複言語・複文化主義は、個人の中にある様々な言語・文化資産を社会全体が認めることなのですが、そのためにはまず私たちが、私たちの教室に来る学習者はどんな資源を持っているのかを知ることが大切です。そもそも、人が国をまたいで移動する理由の多くは仕事を求めていることであり、本人も社会側も「言葉ができないから仕事ができません」というわけにいかず、必要な学び、情報も個々によって違います。EUではそのような考えが根付いているのだそうです。

また、EUの事例から「社会参画」のための言語教育を考えるなら、「生活場面」だけでは事足りず、MIPEXの8領域がヒントになりそうだということと、「ライフステージで考える必要性」についてもお話をいただきました。

海外の移民教育について、韓国とドイツのお話を中心に伺うことができたのも、大変貴重な機会となりました。そうした中、移民への理解には国と国民に開きがあるという現実も垣間見えました。だからこそ、ドイツは互いに成功体験が見える「行動中心主義」を取っていることを知りました。

講座後のアンケートでは、「日本語教育に身を置いて、他国の移民施策の事例を聞く機会が少なかったので、とても興味深く聞けた」という感想が多く聞かれました。この講座はすごく胸落ちした方が多かったようなのですが、それは皆さんが日ごろ、地域日本語教室での実体験として、無意識に複言語・複文化能力を使って支援にあたっているからなのかもしれませんね。

こうして私たちは同じ志で、12月まで続く講座の初日を終えることができました。オンラインによって、全国(海外)から多くの方々にご参加いただき、とても嬉しく思います。

最後に、この日ご一緒した皆様と記念撮影をしました♪

Maraming salamat po.

みなさん、引き続きよろしくお願い致します。