(報告)調査の手法から考える「生活者としての外国人」のニーズを基盤とした地域日本語教育

このたび、緊急開催!ということで公開講座「調査の手法から考える(「生活者としての外国人」のニーズを基盤とした地域日本語教育)」を実施しました。

講師は静岡県立大学国際関係学部教授・高畑幸先生です。

ところで、高畑先生からご参加者26名には事前にアンケートのご協力をお願いしていました。「今回、フィリピノナガイサの講座に参加するのは何回目ですか」の問いに、約半数の方が「はじめて」とご回答くださっています。

講座開始時の自己紹介では、全国から、さまざまな背景を持つ方々が、それぞれの現場ごとに課題意識を持って、ご参加いただいていることも伝わってまいりました。

日本語教育関係者(教師、ボランティア、日本語学校経営者)、自治体や国際交流協会の職員、大学教授、大学生、外国人雇用コンサルティング会社経営者、そして海外からのご参加も複数名…新しいつながりに感謝いたしますm(__)m

さぁ、内容のご報告です。先生からは冒頭、「本講座の目的として、『生活者としての外国人』が日本での生活をより充実したものにするために行う日本語教室というものがあり、そこにはどんなニーズがあるのか?それらを知るための調査の方法や気をつける点などについて学びます」というお話がありました。

一つの事例として、1990年代に先生が名古屋栄東地区のフィリピンコミュニィに関心を持ち、2000年代に入ってからは同地区の日本人を対象に外国人住民の地域参加に関する意識調査をしたこと、その調査をきっかけに、地域全体が共生社会に向けて動いていき、行政と地域組織、フィリピンコミュニティが連携した「共生事業」が根付いている…そのような話をお聞きしました。

この地区のフィリピンコミュニティであるフィリピン移住者センター(FMC)では、フィリピンの方々の生活や抱えている課題など、色々見えてきたのだそうです。(キーワード/「ラポール形成」「参与観察」「ゲートキーパー」)

その後、栄東地区の日本人住民を対象に意識調査をする必要を感じて、町内会長さんに協力のお願いに行ったそうですが、最初は「この人だれ?」というご反応だったとか。

けれども調査後、「数字として結果が表れる」というのが一つの説得材料になり、町全体が動いていった!と。

こうした実例を伺うと、大変励みになります。興味深くお聞きました。

また、調査実施前に町内会長さんたちと話しながら、先生が「もともと日本人住民も、”なんか最近、外国人増えているよね。何か一緒にできないかな”ということをぼんやりとでも思っているのでは?」と予想を付けていたからこその行動力と結果だったのだとわかりました。

調査の結果は当時、中日新聞にも取り上げられ、両者(フィリピンコミュニティと自治会)の声が社会の中に「見える化」されました。これにより、あらたに「行政(中区まちづくり推進室)」が加わり、互いの関係性が続く仕組みができたことも必見です。

★栄東まちづくりの会(こちら)…高畑先生の調査後、町内会等の地域組織から代表者を出して結成された。活動の目的のひとつが「外国人住民との共生」(2003年)。

★フィリピン人移住者センター(FMC)…日本で暮らすフィリピン人を支援し、社会・文化・経済・政治的地位の向上を目指すとともに、日本内外の他団体と連携しながら、フィリピン系コミュニティと日本社会との良好な関係を築くことを通じて多文化共生社会の構築を目指している団体です(代表:石原バージさん)。

それぞれの団体は長年にわたる多文化共生の活動が評価され、2013年と2015年に愛知県知事から表彰されたそうです。また、今年はコロナ対策に向けた活動として、「FMC」の皆さんが同地区の飲食店で働く外国人にマスクを配布されたとうこともお聞きしました。

栄東地区での多文化共生事業については、ぜひ「こちら」の動画もご覧ください(制作:DiVE.tv)。

こうした先生のお話から、リアルな社会現象の中に自分たちも存在しているということを「まず、知ること」「関心を持つこと」から調査へ踏み出し、分析結果から、それぞれの現象の関係性を知り、必要な仲介を行うことができることも教えていただきました。

その他、調査の進め方や注意点などをお聞きしましたが、こちらはご参加いただいた方のみの特典として、本記事への掲載はここまでにさせていただきますm(__)m

「社会調査」について詳しく知りたい方は、「社会調査士」の認定団体である一般社団法人社会調査協会ホームページをどうぞ(こちら

全国で200以上の大学に社会調査士資格取得のためのカリキュラムがあり、ホームページではその大学の一覧が見られます。これは学生が「社会調査士の資格を取りたい」というときにも、自治体が「住民に向けた調査で地元大学の協力を得たい」という場合にも参考になるそうですよ。

さらに、社会調査について独学でもっと勉強を深めたい方は、甲南大学の「社会調査工房オンライン」のサイトにも調査のノウハウが書かれています。参考にしてください。

最後は恒例のご参加者と記念撮影をさせていただきました。本事業は文化庁委託にて実施しましたが、皆さまとともにこうした講座に参加した足跡を残すこともまた、次の活動に結び付きます。ご参加、ご協力、改めましてありがとうございます。

講座を改めて振り返りまして、先生から大事なメッセージを受け取ったと思います。それは、「調査をするということは、調査を受ける側の時間を奪ったり、調査内容によっては精神的苦痛を与えるようなものもあるかもしれない。そのことを常に頭に入れた態度と配慮をもって、調査に関わるように」ということです。信頼関係の構築、無駄のない聞き方の大切さから、これまで本事業がシリーズで実施してきた「やさしい日本語」に通じる点が非常に多いと感じました。

高畑先生、今回は大変貴重なお話を聞かせてくださいまして、ありがとうございました。Maraming salamat po.